図1 新商品の展示例
図1 新商品の展示例
[画像のクリックで拡大表示]
図2 体験会の会場は,元中学校
図2 体験会の会場は,元中学校
[画像のクリックで拡大表示]
図3 消費電力比較。左から,今回の40型液晶テレビ,従来の40型液晶テレビ,36型CRTテレビ
図3 消費電力比較。左から,今回の40型液晶テレビ,従来の40型液晶テレビ,36型CRTテレビ
[画像のクリックで拡大表示]
図4 開発した小型電極。直径は1mm
図4 開発した小型電極。直径は1mm
[画像のクリックで拡大表示]
図5 蛍光管の比較
図5 蛍光管の比較
[画像のクリックで拡大表示]
図6 省電力機能のデモンストレーションの様子
図6 省電力機能のデモンストレーションの様子
[画像のクリックで拡大表示]
図7 人がいないことを検知してから,画面表示をオフするまでの時間設定画面
図7 人がいないことを検知してから,画面表示をオフするまでの時間設定画面
[画像のクリックで拡大表示]

 ソニーマーケティングは2009年1月20日,消費電力を従来に比べて約40%低減できるというソニーの液晶テレビ「BRAVIA」の新製品「V5シリーズ」などを使った「新商品体験会」を開催した(Tech-On!関連記事1)(図1)。さまざまな利用状況での消費電力の低さや採用した技術などの効果の高さを,市場分析や同社従来品との比較を交えながらアピールした。今回の製品は省電力機能を充実させた製品であり,「最大の特徴はエコ」(同社)ということから,統廃合によって廃校となった中学校を再生させた「世田谷ものづくり学校」を新商品体験会の会場とした(図2)。なお,ソニーはV5シリーズと同様の省電力機能を用いた液晶テレビを,2009年1月8~11日に米国ラスベガスで開催された「2009 International CES」にて発表済みである(Tech-On!関連記事2Tech-On!関連記事3)。

 液晶テレビの新製品といえば画質面の高さ,さらに最近は筐体の薄さも前面に押し出すことが多い。例えば,ソニーが2008年8月に発表した製品群は好例だ(Tech-On!関連記事4)。今回の製品群は,それらとは一線を画す。ソニーマーケティングによれば,薄型テレビに対する消費者の要求が多様化していることが背景にあるという。多様化によって,消費電力の低さが製品の競争力につながるという考えである。一般家庭での電力消費の「約10%はテレビによるもの」(同社)であり,冷蔵庫などの家電製品は消費電力の低い品種が選ばれる傾向にあることから,同社は液晶テレビでも消費電力の低さで製品を選ぶ消費者は多いとみる。

 今回の製品群に先立ち,ソニーは消費電力を従来比で約25%減らせるとする32型液晶テレビ「KDL-32JE1」を2008年7月に発売した(Tech-On!関連記事5)。消費者からは32型より画面寸法の大きな品種に対する要望も強かったという。これらの要因から,V5シリーズではさらに省電力性能を高めた上に,画面寸法を46型,40型と大きくした。なお,ソニーは消費電力を低減するために画質は犠牲にしていないことを強調する。V5シリーズでも,例えば映像を120Hzで表示する技術など従来品に遜色ない技術を用いているという。

小型HCFLの開発に,トリニトロンの部品製造技術を活用


 消費電力低減に向け,V5シリーズで工夫した点は大きく二つある。一つは,消費電力の低いバックライトを採用し,液晶テレビの消費電力そのものを低く抑えたこと。もう一つは,視聴状況や使い方などによって消費電力をさらに削減できる機能を強化したことだ。

 このうち前者のバックライトの改良は,従来比約40%減という低い消費電力を実現する原動力となった。体験会ではV5シリーズの40型品と,2000年に発売した36型CRTテレビや従来機種の40型液晶テレビ(2008年3月発売の「V1シリーズ」)に同一映像を表示させ,そのときのテレビ全体の消費電力を比較していた(図3)。それらの消費電力の差は映像によって変わり,CRTテレビと従来の液晶テレビが210W弱のとき,V5シリーズの40型品が100W弱という場面もあった。

 バックライトで改良したポイントは,光源の高効率化と拡散板など光学部品の光透過率改善である。このうち,効果が大きかったのが光源の高効率化である。今回採用した光源は,従来から使われる冷陰極蛍光管(CCFL)ではなく,一般的な照明用蛍光灯で使われる熱陰極蛍光管(HCFL)である。一般にHCFLはCCFLよりも発光効率が高いものの,外形が直径15~20mmと太く,液晶テレビのバックライト光源には向かなかったという。管内に配置する電極が大きかったからだ。今回,トリニトロンの部品製造で培った技術を活用して,直径1mmと小型の電極を開発した(図4)。これにより,蛍光管の外形をCCFLと同等の直径4mmに細くできたという(図5)。蛍光管の寿命もCCFLと同等とする。

 HCFLによって光源の発光効率が高まったことから,バックライトに搭載する蛍光管の数をほぼ半分に減らせたという。なお,HCFLの発光効率についてソニーは,「CCFLよりも高まっている」とするだけで数値を明らかにしていない。

人がいなくなると,テレビの消費電力は白熱電球1個程度に


 一方,視聴状況や使い方などによって消費電力をさらに削減できる機能としては,人感センサを利用して人がいなくなると自動的に画面表示を消す機能や,電源コードを抜かなくても電力をほぼゼロに近づけるスイッチを設けた。従来は,「ダイナミック」「スタンダード」「シネマ」といった画質モードの設定,照度センサによって周囲の明るさを検知してバックライトの明るさ調整といった機能による消費電力削減機能はあったが,今回は前出の機能を追加した形だ。新商品体験会では,V5シリーズの消費電力を計測したデータをリアルタイムに表示し,各種機能による効果を見せていた。

 新商品体験会で用意したデモンストレーションでは,V5シリーズの46型品を使った(図6)。例えば,映像の輝度を高くして表示するダイナミック・モードで表示すると140W程度だったが,人感センサによる機能を使うことで消費電力は60~70Wと,白熱電球が1個分程度にまで下がった。人の動きを感知すると,瞬時に画面表示を復帰する。

 人感センサとして,液晶テレビ前面の下部中央に赤外線センサを設けている。このセンサを使い,左右80度,上下30度の範囲をスキャンして物体の動きをリアルタイムで検知している。その範囲で,物体の動きが所定の時間内になかったら画面表示をオフにし,オフの状態で物体の動きを検知したら画面表示を瞬時にオンにする。「液晶テレビから3m以内の距離では数センチの動きを,3~5mの範囲では大きな動きを検知している」(ソニーの説明員)という。動きがないと判断して画面をオフするまでの設定時間は,7秒,5分,30分,60分で設定可能である(図7)。

 人感センサの効果に加え,画質モードの違いや照度センサの効果による消費電力の違いも見せた。例えば画質モードでは,ダイナミック・モードで138Wだった消費電力はスタンダード・モードで100W程度に,シネマ・モードで90W程度に下がる。照度センサでは138W程度だった消費電力が100W弱にまで減っていた。

 このほか新商品体験会では,V5シリーズと同時に発表した「J5シリーズ」も展示していた。J5シリーズはKDL-32JE1の後継モデルであり,画面寸法は32型に加えて26型,22型,19型を用意する。

この記事を英語で読む